5月17日(日)、元毎日新聞記者で『本の寺子屋』研究会幹事を務める高橋龍介さんの講演会を開催しました。

講演会の前に行われた開講式では、昨年亡くなられた本の寺子屋の生みの親である長田洋一さんの紹介がありました。また、教育長の挨拶では、図書館の中心事業の一つであり、15年目を迎えた本の寺子屋について。塩尻のブランドとして育てていきたいと申し上げました。

高橋さんは、今後の本の寺子屋が目指していきたい姿について語ってくださいました。

講演概要

」始めに高橋さんは、有名作家でも評論家でもない自分が今回講師として呼ばれたのは、『本の寺子屋』研究会のひとりとして『「本の寺子屋」が地方を創る』や『「本の寺子屋」新時代へ』を執筆したことにある。『本の寺子屋』研究会のメンバーは長田洋一さん、塩尻市立図書館の元館長で一昨年亡くなられた内野安彦さん、そして自分の三人の会だったが、今は一人だけになってしまった。研究会の生き残りとして、この本の寺子屋について考えていきたいと仰いました。

 長田洋一さんも『「本の寺子屋」新時代へ』であげていたが、これからの本の寺子屋は中高生ら若者たちの参加を促す仕掛け、企画が必要だ。塩尻市内には中高生がいないわけではない。では何故今の寺子屋に中高生はこないのか。それはもう一つの寺子屋、いわゆるSNS、ゲーム、生成AIなどのスマホを使用しているからだ。今の時代は6歳の10人に一人がスマホを持つ時代になった。本、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌がなくてもスマホがあるから困ることはない。便利な時代になったからこそ、若者のSNSへの依存が問題視されている。とスライドに沿って課題を話され、さらに現代のスマホについて、芥川龍之介の作品『蜘蛛の糸』に登場する蜘蛛の糸に例え、「銀の糸は現代の若者にとっての「スマホ」ではないか。スマホは孤独や不安を解消してくれるように見えるが、実際には孤独を深め、自分自身で考える時間を奪い取っている」と語りました。

 今後の寺子屋について改めて考えたとき、スマホを禁止するだけで若者が寺子屋に来るかと言われればそうではない。人を揺さぶり考えさせる力がある本と、感覚への訴求が高い動画を使って、寺子屋のダブルスクール化が必要になってくる。図書館職員は街へ出て、市民の知恵や歴史という「素材」を集める、単に講師を招くレストランになるのではなく、みんなで素材を持ち寄り、料理する「かまど」にしていく。そして若者が持っているスマホにある問いを寺子屋に迎え入れ、資料や本を通じて議論し、SNSで発信する。デジタルと物理的な場の往来を通じて、市民と共働で作ることが、長田洋一さんの願いに対する答えになるのではないか。と締めくくりました。

日時

2026年5月17日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

高橋龍介(たかはし りゅうすけ)さん

 1960年東京生まれ。筑波大学人文学類卒業。同大学大学院修士課程修了。毎日新聞社入社。地方部、外信部、モスクワ特派員、社会部、編集総センター、静岡支局、松本支局、浜松支局、長野支局、中部報道センター、岐阜支局を経て2020年退職。この間、長田洋一さん、内野安彦さんら「本の寺子屋」関係者を取材、研究会発足。『「本の寺子屋」が地方を創る』(東洋出版、2016年)、『「本の寺子屋」新時代へ』(東洋出版、2020年)を研究会幹事として取材、執筆。訳書に『ようこそ旧約の世界へ 家族で楽しめる旧約聖書111話』(長司祭A・ソコロフ著、凱風社、2013年)。近著に『「はじめの一歩教室」やってるよ! 名古屋の自主夜間中学奮闘記』(同時代社、2024年)。名古屋市在住。

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