信州しおじり本の寺子屋の、塩澤実信さんによる講演会の報告をしています。

講演会「古田晁の精神」

長野県出身で、出版社の編集局長など多彩な経歴をもち、”出版ジャーナリスト”として数多くの作品を生み出した塩澤実信さんの講演会を開催します。

長田洋一氏から「出版人」についての執筆依頼があった際、迷わず『古田晁伝説』(河出書房新社)を書かれた塩澤さんに、出版人では稀有な存在ともいえる“ペンで己を表現しなかった人・古田晁”の精神についてお話しいただきます。ぜひご参加ください。

日時

2014年10月5日(日曜日)13時30分から15時30分

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階・多目的ホール

講師

塩澤実信さん

1930年、長野県に生まれる。出版ジャーナリスト。日本ペンクラブ、日本出版学会名誉会員。双葉社取締役編集局長をへて、東京大学新聞研究所講師等を歴任。主な著書に『出版社の運命を決めた一冊の本』(流動出版)、『雑誌記者池島信平』(文芸春秋)『昭和ベストセラー世相史』(第三文明社)『出版界の華麗なる一族』(朝日出版社)『戦後出版史』『出版社大全』(論創社)『古田晁伝説』(河出書房新社)等多数。

当日の概要

塩澤実信さん1
塩澤実信さん2

長野県飯田市出身で、出版社の編集局長を経て、出版ジャーナリスト、東京大学新聞研究所講師など多彩な経歴をおもちの塩澤実信さんを講師にお迎えいたしました。

本の寺子屋ナビゲーターの長田洋一さんによれば、塩澤さんは編集者としての経験を生かした「出版ジャーナリスト」の先駆け。「古田晁伝説」を出版なさった際には多くの書評に取り上げられました。講演では、長いこと活躍なさった編集者としての視点と、出版界に関する豊富な取材を重ねた塩澤さんならではのエピソードをふんだんにお話しくださいました。

古田晁さんは筑摩書房で多くの著名な作家の単行本や全集を刊行しました。通常は誰もがよく知る作家は老舗出版社が信頼関係を築いていて、当時まだ起業間もない新進の出版社でそのような本を出すことは大変でした。ところが実直な人柄の古田さんがお願いに行くと、脂汗を出さんばかりにビシッとしているだけですさまじい迫力があり、相手を説得してしまうことがあったそうです。その他、太宰治と古田さんの関係など、作家と出版人の具体的なエピソードをさまざまお聞きできて、古田さんの業績のすごさが理解できるとともに、引き合いに出された作家さんたちの人となりも窺うことができました。

また筑摩書房経営の苦労話から、出版社経営にとって定期刊行物(雑誌)の重要さに話題が移り、筑摩書房で刊行した「太陽」や他社の雑誌のタイトルを挙げて、「売れる雑誌」の条件を、かつての人気雑誌編集者ならではの分析を加えてお話しくださいました。その他、「出版社の財産は『図書目録』」「本物か偽物か」など出版界全体についても語られて、多岐に渡る興味深いお話をお聞きすることができました。

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