信州しおじり本の寺子屋の、姜尚中さんによる講演会の報告をしています。

講演会「読書が深める心」

日時

2014年10月19日(日曜日)13時30分から15時30分

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階・多目的ホール

講師

姜尚中さん

1950年、熊本県熊本市に生まれる。国際基督教大学準教授、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在聖学院大学学長、東京大学名誉教授。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍。主な著書に『マックス・ウェーバーと近代』、『オリエンタリズムの彼方へ』、『ナショナリズム』、『東北アジア共同の家をめざして』、『増補版 日朝関係の克服』、『在日』『姜尚中の政治学入門』、『ニッポン・サバイバル』、『愛国の作法』、『悩む力』、『リーダーは半歩前を歩け』、『あなたは誰?私はここにいる』など。共著に『グローバル化の遠近法』、『ナショナリズムの克服』、『デモクラシーの冒険』、『戦争の世紀を超えて』、『大日本・満州帝国の遺産』など。編著に『在日一世の記憶』など。小説『母―オモニ―』、『心』を刊行。最新刊は『心の力』。

当日の概要

姜尚中さん1

姜さんが青春時代大きな感銘を受けたという夏目漱石の作品を軸に、読書が人間の心にどのような影響を及ぼすかをお話しいただきました。
『坊っちゃん』や『三四郎』を例に、夏目漱石の作品は「教養小説(ビルドゥングスロマン)」と言えるものが多く、姜さん自身も若いころに、漱石の小説の主人公と自分の状況を重ね合わせ、それが漱石にはまるきっかけになったとのことです。ただし、「教養小説」という言い方は堅くてとりつきにくいため、「自己形成型小説」という呼び方を使われていました。

姜尚中さん2

お話の中で、今の若者は、不況や就職難といった不安定な社会状況の中でこれからの展望を抱きにくく、「なんとなく」生きている人が多いのではないかと分析されていました。そのような若者が「自己形成型」の物語に出会うことで自分を変えるきっかけになるのではないか、漱石の小説はその代表と言えるのでは、とのことでした。
また、書き手にとって小説とは、読み手に自分の物語を生き続けさせるもので、読むということは「受け継ぐ」ことと言え、『こころ』という小説のテーマはまさに「受け継ぐ」ということではないかというお話もされていました。

20141019kansannjun