「信州しおじり本の寺子屋」事業の、装丁企画展の報告をしています。

企画展「堀口大學にみる装丁・挿絵-華麗なる詩集のかずかず-」

堀口大學は、多数の海外作品翻訳と新感覚の知的抒情詩で知られています。
そして当時の愛書家を魅了したのは、堀口が名だたる芸術家らとともに世に送り出した、美しい本。
日本が鎖国を解いて、西洋の文化を取り入れ、列強に並ぼうとしていた頃。
文学の分野でも、
美しい印刷、美しい装幀、美しい版画に飾られた、
「美しい詩集」を作った時代があったのです。
このたび「信州しおじり 本の寺子屋」事業にあわせ、堀口大學本の個人コレクターである山村光久様のご協力により、貴重なコレクションの一部を塩尻市立図書館で公開できる運びとなりました。
今回は翻訳、作詩、豪華本など全38点を展示いたしました。
宝石が表紙に埋め込まれた豪華本など、ケースをのぞき込んでおられる方もしばしばお見受けいたしました。
当時の愛書家を魅了した堀口大學の装丁を、多くの利用者の方々にご覧いただく機会をくださいました、山村光久様をはじめとする皆様に、改めて感謝申し上げます。

展示品(個人蔵)

「月下の一群」(コクトーら作者の肖像画16葉)、「CHANSONS MALAISES(マレー乙女の歌へる)」(マチスの詩人画入りなど、版違い8種)、「鴛鴦集」(ゴル夫妻:著、シャガール:挿画)、「堀口大學詩集」ほか、堀口大學の詩作、翻訳など、全38点

展示期間

2015年1月4日(日曜日)から1月25日(日曜日)

展示時間

図書館開館時間内

平日・土曜

10時から20時

日曜・祝日

9時30分から18時

展示場所

塩尻市立図書館・1階 展示コーナー

入場料

無料

展示の様子

堀口大学展示1

企画展「堀口大學にみる装丁・挿絵」に寄せて

堀口大学という詩人がいました。
当時珍しかった外国暮らし、また与謝野晶子の弟子で佐藤春夫やコクトーやマリー・ローランサンともお友達という珍種。そして、時代はおしゃれで美しい詩集を求めました。
そんな、堀口大学の本たちのほんの一部をここに展示します。
夢見る詩人とよき時代の残り香を感じていただければ幸いです。

平成27年1月 山村光久

文学・美術を問わず、並みいる芸術家と親交があった大學は装丁に関しても一家言持っていた。
出版者・長谷川巳之吉や版画家・長谷川潔らが装丁に携わり、美術品として鑑賞にたえる美しい本を数々世に送り出した。また巳之吉は詩集販売の難しさを知っており、戦略上「美しい装丁」で本の価値を高めて販売したとも言われる。
今回は宝石を表紙に嵌め込んだ豪華本や漆塗り、皮の編みこみなど趣向を凝らした本を展示している。

堀口大学展示2
ケース1「豪華本」
堀口大学展示3
ケース2「作詩」

学生時代から与謝野鉄幹・晶子夫妻に師事するなど文学青年だった大學は、海外生活で名だたる外国文学に触れ、芸術家と交友を深めた。病弱だったこともあり、父の庇護の元、十数年にわたる「高雅な閑人」といわれる時間を過ごし、その間、美術でも文学でも多様な変化を迎えていたヨーロッパにおいて数々の文学に触れ、翻訳し、作詩の力を養った。

外交官の父に従って長年海外で生活した大學は、ベルギー人の継母や文学を解した父の影響で海外文学に親しんだ。大學の翻訳による新鮮な世界は、昭和初期の新しい詩運動に大きく影響を与えた。装丁に贅を尽くした『月下の一群』は高価なため売れ行きが心配されたが「案外よく売れて、初版1200部は数か月で品切れ」になったという。

堀口大学展示4
ケース3「翻訳」
堀口大学展示5
ケース4「版画」

大學は海外生活でさまざまな芸術家と交流をもち、マリー・ローランサンなどの本を出すに至った。またこだわりのある装丁家や版画家が大學の作品や装丁に惹かれて、作品を提供するようになった。日本人では長谷川潔や岡本太郎、棟方志功、東郷青児、蕗谷虹児らが挿画を担当している。

お問い合わせ

塩尻市立図書館・本館
長野県塩尻市大門一番町12-2
電話:0263-53-3365
※毎週水曜は休館日です。

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