8月24日(日)、幅広い世代から愛される絵本作家、五味太郎さんの講演会を開催しました。本講演会は市内、市外の方含めて500人以上の申し込みをいただき、抽選を行いました。

8月20日に80歳の誕生日を迎えた五味さんは80歳とは思えない若々しさで、様々なお話をしてくださり、大変賑やかな講演会となりました。

講演概要

 呼ばれて塩尻にきたものの、別に塩尻の人に何かを伝えたいという意欲はないと最初に言い放った五味さん。

「子どもにどんな絵本を与えたらいいのか」等を何も考えずに子どもの本という特殊な世界に入り、幼児教育の不自然さについて学び始めた。今自分の本がこれだけ人気なのは、自分の趣味で描いたものが、自分と趣味の合う人に刺さった結果だ。学生時代に悪戯や人前でパフォーマンスをすることが多く、その際にも、50人いたら3人は誰かのツボに入る。自分は100%の中で94%には無視されても6%の人、できれば1割ぐらいにウケる人生でもいいなと思った。そして、それが今では大きくなり、絵本と言えば五味太郎と言ってもらえるようになった。

 自分の本が多くの人に評価を得ている理由や、自分が絵本を描き続けている理由は何か考えたとき、自分にとって出版作業をすることが向いていて、ある意味健康的になるということに気づいた。また、趣味を共有することや趣味の合うものと出会うことの幸せもある。本来、子どもは趣味に忠実だが、現在の日本の教育制度の中では自分の個性を内に秘めたまま社会性を身に着けていく。一般的な素直な良い子と言うのは、何でも「はーい」と返事をすることだとなるが、本当の素直さはいつもと違うことがあれば「なんでですか」と質問することだ。素直に対する解釈が違う。素直な「ふり」が上手な子どもが、やがては大人になっていく。対応型ではなく、自分で考えられるようにならなければいけない。自分は面白いと思うことを仕事と同義にし、遊びの完成度を上げていくことで、仕事の完成度も上がっていった。興味がわいたら何を学ぶべきか。絵本や本を読むことはある意味鏡みたいなもので、たくさんの本を知ることで自分と同じような趣味を持った人がいることが分かり、そこから自分を確認することができる。と述べた。

 質疑応答の時間では、五味さんと趣味の合う聴講者たちから様々な質問が出された。例えば五味さんの趣味に対しての質問では趣味というのは整理みたいなもので、特に何かをやっていることもない。自分を組み立てるひとつのもの。他にも絵本を作るときは何を考えながら作っているのかという質問に対して、「絵本を作るときは大体思いつきなので分からない!」とはっきり言うと、気になることがあれば、これ本になるかなと思うこともある。また、自分の絵本の作り方が分かってしまうと作業の魅力がなくなってしまう。それ以外に対しても絵本は再認識されていて、子どもが読める本ではなく、子どもから読める本というのが素敵だ。五味さんの本は海外でも人気があり、それは言葉が通じなくても絵で伝えることができたからだ。言葉というものが信用できなくなっていく中で、絵本表現というものが世界的アプローチになっている。と仰っていた。

 最後は五味太郎さんが自費で行う今年の冬に行う展覧会についてお話し、最初から最後まで五味さん節を披露した講演会となった。

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普段より多く質疑応答の時間があり、五味さんの考えや生き方を直接聞くことができる貴重な機会でした。

五味さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

日時

2025年8月24日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

五味 太郎(ごみ たろう)さん

 1945年、東京生まれ。工業デザインの世界から絵本の創作活動にはいり、ユニークな作品を数多く発表。子どもからおとなまで、幅広いファンを持つ。著作は400冊をこえ、多くの絵本が世界各国で翻訳されている。代表作に『きんぎょがにげた』『みんなうんち』『言葉図鑑』『さる・るるる』などがある。

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