告知内容

 大宅壮一ノンフィクション賞や、講談社ノンフィクション賞などを受賞されている、佐野眞一さんの講演会です。60年安保闘争の中心人物「唐牛健太郎」について書いた『唐牛伝』の刊行にあたり、取材活動を続けた佐野さんが見た同氏の魅力や、ノンフィクション作家という仕事の本質についてお話しいただきます。

講演概要

 9月10日(日)、ノンフィクション作家の佐野眞一さんの講演会を開催しました。

 講演では、唐牛健太郎が題材の新著『唐牛伝 敗者の戦後漂流』を軸に、ノンフィクション作家という仕事への思いをお話しいただきました。

 唐牛健太郎は1960年代の学生運動活動家で、60年安保闘争時に全学連を指揮した人物です。当時13歳だった佐野さんは、彼らのエネルギーに圧倒され、資料を読みあさったそうです。佐野さんは「全学連は敗れたが、彼らが戦ったおかげで日本はどうにか戦争をしない国になった。そんな彼らの人生をたどってみたかった。」といいます。
ノンフィクションの魅力は描く人物の魅力、という佐野さん。佐野さんが魅力を感じるのは、幅広さと奥深さがあり矛盾を抱えた人物で、そうでないと書いていても面白くないといいます。その人にほれ込み、居場所を探し当て、一言をもらうために何年もかけて説得して話を聞きだす。そうして深く掘っていくと意外な事実が見つかるし、深く分け入っていかないとその人の本当の姿はわからないと語りました。

 佐野さんは、ノンフィクション作家の仕事は、魅力的な人物を探して通り一遍でない物語を書くことだとし、今の日本には書きたいと思える人物が少なく、日本人は「小粒」になってしまったと感じています。出版不況と呼ばれて久しいが、とりわけノンフィクションに関して言えば、決して情報化社会に起因するものだけとは思わないと説明されました。

 最後に、「本の世界は深々と深いもの。全世界の歴史が詰まっている。それは紙の本が可能なこと」と語ってくださいました。

 当日は佐野さんの著書の販売とサイン会も行いました。ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。

日時

2017年9月10日(日曜日)13時30分から15時30分

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階・多目的ホール

講師紹介

佐野眞一さん(ノンフィクション作家)

1947年、東京生まれ。1997年『旅する巨人―宮本常一と渋沢敬三』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2009年『甘粕正彦 乱心の曠野』で講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に『巨怪伝―正力松太郎と影武者たちの一世紀』、『東電OL殺人事件』、『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史(集英社)』、『あんぽん 孫正義伝(小学館)』など多数。

講演写真

佐野眞一さん1
佐野眞一さん2

ポスター

20170910