告知内容

 現代のような道具や技術を持たない江戸時代、本はどのように作られ、売られていたのでしょうか。また、当時の人々にとって本はどのような存在だったのでしょうか。神保町にある古書店「誠心堂書店」の店主で、江戸時代の本事情に精通されている橋口侯之介さんをお招きし、当時の様子を学ぶとともに現代に通じる日本人の書物観を探ります。

講演概要

 10月1日(日)、神保町の古書店誠心堂の店主橋口侯之介さんをお招きし、江戸時代の読書や出版文化ついて学ぶ講演会を開催しました。

 江戸時代、日本には寺子屋が普及し庶民の読解力が向上したことで、それまでの時代と比べ、多くの出版物が流通しました。本の種類も、専門書などの高度な本から、庶民がわかるレベルの内容のものに変化し、それらの本が江戸の出版業界を支えていたそうです。

 江戸の本屋は、本の総合商社で、出版から、取次、新刊/古本販売、貸本など何でもこなしていました。地方出版の機運も高まり、松本市の高美書店をはじめ、長野県内に出版社ができたのもこの時期でした。

 印刷方法は、木版印刷が主流。欧州諸国ではグーテンベルクが発明した活版印刷が中心でしたが、中国や日本は文字の種類が多く活版に不向きでした。このため、一時は活版印刷が取り入れられましたが、30年足らずで木版印刷に戻ってしまったそうです。

 「本は次世代に伝えるためのもの」という考えがあり、本の修理も所有者が自分で行っていました。他国と比べ、日本に古い本や文書が多く残っているのは、この考え方によるものと、紙の素材が和紙だったことによるものと説明されました。

 最後の質疑応答では、受講者の方から現在の出版や書店の減少について心配する声が挙がりました。橋口さんはこれに対し、江戸時代にも同じことが起こったと説明。明治になると本の技術革新が進み、和書が減少、江戸の本屋はほどんど廃業してしまったそうです。これは書籍の電子化による、今の書店の減少と通じるところがあるのではないかとお話されました。

 ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

日時

2017年10月1日(日曜日)13時30分から15時30分

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階・多目的ホール

講師紹介

橋口侯之介さん(誠心堂書店(東京・神保町)店主)

東京・神田で和本・書道の専門店を営む 「誠心堂書店」の店主。四十年の経験で すっかり和本の世界に魅かれ、この世界 をぜひ伝えたいと成蹊大学・上智大学な どで教鞭をふるっている。 主な著書に『和本入門―千年生きる本 の世界』(平凡社、2005年)、『江戸の 本屋と本づくり―続和本入門』(平凡社 ライブラリー、2011年)、『和本への招 待―日本人と書物の歴史』(角川選書、 2011年)など。

講演写真

橋口侯之介さん1
橋口侯之介さん2
橋口侯之介さん3

ポスター

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