6月29日(日)、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授で景観設計や公共空間のデザイン、まちづくりが専門の柴田久さんの講演会を開催しました。

地方都市の活性化に向けた景観・公共空間のデザインについて具体的な実例をスライドで紹介し、解説くださいました。

講演概要

柴田久さんは多くのまちづくり、景観設計やデザインに携わっています。柴田さんはまず、地方都市の衰退は深刻な問題で、人口が減っている。日本全国元気がなくなって町の生き残りをかけて活性化をめざしているが、現状人口を増やすことは難しい。人口を増やすためには関係人口(ふるさと納税や観光等)を増やすことが重要だと言います。

現在、地方都市は車社会です。高齢化も著しく車が無いと生活できないですが、あえて歩きたくなるようなまちづくり(ウォーカブル)を目指すことが必要です。塩尻市にも奈良井宿というかつての宿場町があります。奈良井宿、歩きたくなる風景です。まちづくりでは何があったら人が来るか。時間帯やコンテンツ、アクティビティ、人の動きなども考えますが、景観保全や地域らしさも必要です。防災の観点も考えなければならないですが、防災ばかりを考えて景観を損ねることは良い事とは思いません。魅力ある景観が眺められる場所(視点場)が用意されることでそこへの来訪者が増え、結果的に賑わいや経済的な活性化につながります。

新型コロナウイルス感染症のことで生活が一変しましたが、良かったことが一つだけあります。地方創生でテレワークの環境を整えテレワーク人口を増やし、オンラインでつながる。IT関係、オンラインでつながることができる会社は、オフィスは郊外、東京でなくても働くことが可能になり環境の良いところで今までと変わらない仕事ができることがわかりました。様々な企業が大都市でない場所にオフィスを移転しています。そのことでインフラを整えワーケーションやテレワーク、「選ばれる地方都市」として関係人口を増やすことに成功した地方もあります。

大都市も戦後からの復興、それから長い時間が経ち都市インフラの劣化と求められる維持管理および空間的な更新、災害の頻発・激甚化に対する迅速な復旧・復興と地域の魅力保持の両立、求められる魅力ある景観・公共空間を「守り・育て・活かす」デザイン。

地方都市活性化にむけた景観・公共空間のデザインに求められる3つのポイントは、

N:日常性

H:波及性

K:継続性が、大切だと仰いました。

柴田さんから最後に「土木の仕事とは、どんなイメージですか?」と問いかけ、「土木の仕事とは、安全・便利・快適なくらし、日常をつくるプロフェッショナルです」と講演会を締めくくられました。

この後、参加者の質問にも時間の許す限りお答えくださいました。

今回は、聴覚障がい者の方の参加により手話通訳もありました。いろんな立場で参加いただきまちづくりを考える機会になりました。

柴田久さん、参加者と手話通訳者のみなさん、ありがとうございました。

日時

2025年6月29日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市北部交流センター(えんてらす) 101・102会議室

講師

柴田 久(しばた ひさし)さん

1970年福岡県生まれ。東京工業大学大学院情報環境学専攻博士課程修了。博士(工学)。専門は景観や公共空間のデザイン、まちづくり。海外での再開発プロジェクトや九州を中心に全国で公共空間整備、地域活性化に向けた計画 、デザイン等の実践に従事。グッドデザイン賞、土木学会デザイン賞 、防災まちづくり大賞など受賞多数。
主な著書に「地方都市を公共空間から再生する」「土木の仕事ガイドブック」ともに学芸出版がある。

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