6月29日(月)、文筆家の猪谷千香さんの講演会を開催しました。
AI時代の図書館に求められる役割とは何かについてお話しいただきました。
講演概要
生成AI(人口知能)は対話型で情報を得られ、人間が考える事の肩代わりをしているように感じられますが、実際には考えているわけではなく、情報の継ぎ接ぎで答えを出しています。これまではネット検索などで得た情報を自分で判断し、取捨選択をしていた。しかし、生成AIの普及により、提示された内容を疑うことなくそのまま信じてしまうなど人間の情報行動に変化が起きています。
生成AIには利用のリスクがあり、よく知られている一つに“ハルシネーション”(嘘を事実のように提示する)があります。
ほかにも、主流な生成AIの海外企業依存や、AI汚染、LLMOなどの危険性も指摘されています。EUでのAI規制法をいくつか紹介し、そのなかで重要視されている“人間中心のAI”何でもAIにすべて任せるのではなく、人間が主体となっていく流れがあると話されました。
ここからお話は人間中心のAIと図書館の役割についてに、猪谷さんはEU規制法と図書館には『透明性の確保』や『差別偏見の排除』など通ずるものがあると話されました。
各国の国立図書館が発表したAIへの方針を紹介され、国家レベルで図書館×AIに特化した指針は未だなく、図書館×AIは政策の空白地帯だとし、“ヒューマンインザループ“(人間の判断を介在させること)がこれから先に大切になると話されました。
司書の専門性、AIにはできないこととしてレファレンスがあります。司書がツチノコについて調べたい子どもにツチノコに対して夢のある資料を提供した事例を紹介し、AIはツチノコの存在を否定し夢を壊す回答をする可能性が高いけれど、司書は質問者の思いを汲んできめ細やかな対応ができると話されました。図書館とAIの協働について、AIが集めてきた情報を司書が評価するなどいくつか具体例を出し、AIが得意なこと、図書館(司書)が得意なことを分担し、AIとの協働についてできることを考え、AIリテラシーを学ぶ場を社会教育の図書館として提供することができるのではないかと話されました。
これからのAI時代の図書館は、元々担っていた考える力を育てる役割がますます必要になってきます。市民が自分で答えを探し、考え、疑う力を持ち、AIに常に答えを委ねる前にまず考える習慣をつける場。図書館は紙媒体の情報に強みがある、今後はさらにAI・デジタルネイティブ世代のニーズに対応できるよう、AIやデジタルの情報にも強い情報アクセスの場に。
人と人がつながり、情報を吟味し、AIには引き出せない回答をその人から得られるなど、コミュニティとしての図書館が今後重要性を増していくのではないか。
人間のためにAIがあるという意識を育て、“ヒューマンインザループ”AIが未来を変えるのではなく、AIで未来を変える。図書館が未来を変える場になれば良いなと思っていますと講座をしめくくられました。
日時
2026年6月29日(日) 14:00~16:00
場所
塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール
講師
猪谷千香(いがや ちか)さん
明治大学大学院前期博士課程修了(考古学)。新聞社文化部記者などを経て、現在はネットメディア記者。図書館・文化施設・法務分野を中心に全国各地を取材。著書に『つながる図書館』『小さなまちの奇跡の図書館』『まちの未来をこの手でつくる』『ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害』など。


