「信州しおじり本の寺子屋」の植田康夫さんによる講演会の報告です。

「<出版の冒険者たち>への賛歌」

「週間読書人」の顧問である、植田康夫さんの講演会を開催しました。

日時

2016年7月31日(日曜日)13時30分から15時30分

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階・多目的ホール

講師

植田康夫さん

1939年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。
「週刊読書人」編集部に勤務し、上智大学文学部新聞学科の専任教員となり、定年後、再び「週刊読書人」に復帰。編集主幹、社長などを歴任、6月から顧問となる。主な著書に、『雑誌は見ていた』、『本は世につれ』など多数。

講演概要

7/31(日曜日)、上智大学名誉教授で、本の書評を主に取り扱う新聞「週刊読書人」の顧問である植田康夫さんの講演会を開催いたしました。

 2002年から2014年にかけ、「週刊読書人」に連載した記事の中から、「ポプラ社、二玄社、小学館、大修館書店、冨山房、暮しの手帖者、農山漁村文化協会」の7社を取り上げ、今年の3月に発売した著書『出版の冒険者たち』。今回はその中から「ポプラ社、小学館、大修館書店、冨山房」の4社取り上げて、お話してくださいました。

「ポプラ社」の創業者である田中治男さんは、月曜から日曜までの毎日、朝5:45に自分の車を運転して出勤するなど精力的な方。そんな精神を受け継いだ同社は、全国の書店を回って、何がいま求められているのかを徹底的に調査し、次の企画に活かす方針で成長したそうです。
 このほか、小学館の雑誌『小学一年生~六年生』の歴史や、大修館書店や冨山房がいかにして長い期間とお金をかけ、『大漢和辞典』や『大言海』といった辞書を作り出したか、などのお話を伺いました。

 植田さんは、出版業はいつの時代も他の業界に比べて厳しく、それを乗り越えて成長していくためには、「冒険者」と呼ぶに値するような創業者や編集者たちがいて、挑戦を続けてきたことを教えてくださいました。そして、そういった「冒険者」がいなくなると、出版業が衰退してしまうと危惧されていました。

 歴史や背景を踏まえた上で本に触れることは、私たち読者にとっては、これまでの本との向き合い方とは一味違う本の魅力を発見できる機会となりうることを感じました。また、厳しい出版業界に身を投じる方々は、総じて、儲けるだけでない、世の中に一石を投じるだとか、世の中の人々のためになる、などの高い理想や努力・忍耐が必要であり、そうしたことができる冒険者でなくては、成り立たないんだ、という事を強く感じました。
ご参加いただいた皆様、植田先生、貴重なお時間をありがとうございました。

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