「信州しおじり本の寺子屋」荒川洋治さんのによる講演会の報告をしています。

講演会「これからの読書のすがた」

現代詩作家の荒川洋治さんの講演会と本の販売&サイン会を開催します。荒川さんは、詩人としての活動はもちろん、随筆などの分野でも大変活躍されていらっしゃいます。「これからの読書のすがた」と題して、読書や出版に関するお話をして頂きます。

日時

2016年12月4日(日曜日)13時30分から15時30分まで

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階・多目的ホール

講師

荒川洋治さん

1949年福井県生まれ。早大卒。詩集『渡世』(第28回高見順賞)、『空中の茱萸』(第51回読売文学賞)、『心理』(第13回萩原朔太郎賞)、エッセイ・評論集『忘れられる過去』(第20回講談社エッセイ賞)、『文芸時評という感想』(第5回小林秀雄賞)、『詩とことば』(岩波現代文庫)、『文学の空気のあるところ』など。最新刊は、詩集『北山十八間戸』(気争社)、エッセイ集『過去をもつ人』(みすず書房)。

講演概要

荒川洋治さん1
荒川洋治さん2

12月4日(日曜日)「これからの読書のすがた」と題して、現代詩作家の荒川洋治さんをお招きし、講演会を開催しました。
長野県にお越しになったのは久々で、幼少期に地図で見ていた岡谷を通って塩尻に来たことに感慨深いご様子でした。途中の山々の景色が素晴らしかったともおっしゃっていました。
講演では、長野にまつわる作家を取り上げ、野尻湖の弁天島に籠って作品『島守(しまもり)』を書いた中勘助、高遠出身で、物売りの人々の様子を書いた私小説がある島村利正などを紹介され、さらに島崎藤村についても「『夜明け前』はいい作品ですよね~」と何回もおっしゃっていました。
先生は、早稲田大学で教鞭をとられていますが、学生の95%は新聞を読まないとのことでした。また、教科書から詩が消えつつあることを嘆かれ、今の時代は、自分がとても大事で他人のことには興味がなく、「本」は他人が書いたものだから興味がもてないのだ、と話されていました。
今回の講演会の中で本のリストを配布され、そのリストのポイントは、詩や俳句・短歌も入れてあること。文学部を出た生徒は就職に不利な時代であるが、「文学は実学である」ともおっしゃられていました。すぐにわかる言葉だけを受け付けるのではなく、言葉の奥にあるものを見ようとすること、想像力を掻き立てる詩や俳句・短歌を大事にすること。また、働く現場や日本の歴史を描いた作品、こういったものを読み、考えることで実生活で役に立つ人間になれると力強く話されていました。
最後に、「これまで文学にはいっぱいいいものがあるのに、私たちは味わい尽くしていない」という言葉で締めくくられました。
風刺の効いたお話で、冒頭から笑いの絶えない講演会となり、参加者の皆様も楽しんでおられました。荒川先生、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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