9月29日(月)に同志社大学免許資格過程センター教授の佐藤翔さんによる講演会を開催しました。講演では、今の時代のキーワードとして「生成AI」「フェイク」「SNS」「情報的健康」が挙げられる中で、図書館員としてこれらとどう向き合えばよいかの話しが展開されました。特に私たちの身近になった生成AIについては、その仕組みから図書館としての扱い方などの話を聞くことができました。

講演概要

生成AIはデータベースのように、ありとあらゆるものを検索して、どこかに存在する答えを持ってきてくれるわけではなく、あくまでもそれっぽい文章を作り出しているもの。検索して導いた答えではなく、学習して作り上げた自分の数式の中にあるものを出して作るため、出典や根拠を出せないという弱点があるそうです。

ただ、現在の大学生や研究者の半数以上は生成AIを使っており、今後、AIを使った質の悪い論文(根拠や出典が示せないような論文)が出回ってしまう未来が近いそうです。そしてそれらの論文は、その後のAIの学習データとなってしまうため、AIが出した答えの信ぴょう性が不確かになっていくというリスクがあることを、私たちは意識していなければいけないと痛感させられました。

佐藤さんは、「図書館員として生成AIの回答には疑義がある。だから使うのは良くない、排除しよう。ということではなく、少しでも生成されたものの信頼性をあげるように、正しい情報、信頼性の高い情報をオープンにしていく必要があるのではないか」と話されました。オープンアクセスになる論文が増えたり、図書館が持つ地域の情報を生成AIや人が入手しやすいように放出することが大事であるため、デジタル化を進め、情報源をよりましなものにしていくことが図書館の役割の一つではないかとおっしゃっていました。

また、図書館員が心にとめておきたい事として、今の社会は「共感>真実」であるというお話もありました。SNSの投稿が炎上した際に、真実が何か、より自分たちがより共感できることは何なのかが重要視されてしまうのが今の社会。

履歴から自分の好みにあうものが「おすすめ」され、興味のある情報しか目に入らなくなってしまうという、とても便利なようで怖い時代であるため、自分の意見がどんどん偏った意見に流れ強化されていることに気が付きにくくなってしまうと言います。

そんな時に自分がパーソナライズされている情報から少し離れることが必要で、それを図書館が担える部分であると言います。図書館は1つのテーマにおいてもさまざまな価値観や意見、立場の違いを考慮しながら所蔵する本を選んでいます。決して共感する本だけがあるわけでなく、自分の考えにマッチしない本も見ることができる環境にあるため、自分の偏りに気づくことができるからだと言います。今後も図書館が幅広く多角的な意見の本を揃えていくことが重要な役割だと佐藤さんはおっしゃっていました。

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今回は図書館職員の研修を目的とした講演会で当館職員も参加し、今の社会で求められる図書館や図書館員としての役割、意識についてアップデートする機会になりました。

佐藤さん、ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました。

日時

2025年9月29日(月) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

佐藤 翔(さとう しょう)さん

筑波大学大学院図書館情報メディア研究科修了。博士(図書館情報学)。

現在、同志社大学免許資格課程センター教授。専攻は図書館情報学。

近著(共著)に『オープンサイエンスにまつわる論点』(樹村房)、『改訂3版 情報倫理 ネット時代のソーシャル·リテラシー』(技術評論社)、単著に『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』(青弓社)など。

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