11月16日(日)に詩人・エッセイストで、生前の谷川俊太郎さんと親交の深かった正津勉さんをお招きして講演会を開催しました。
講演では、谷川俊太郎さんの詩を読み解くとともに、谷川さんとの思い出やエピソードについてお話ししてくださいました。
講演概要
谷川俊太郎さんは詩、翻訳、絵本など、非常に幅広い作品を多く出していて、ご本人もどれくらい出版されていたかわからなかったそうです。そんな谷川さんの作品の中で、「ひらがなの詩に光をあてたい」と正津さんは言い、いくつかの詩を朗読して解説してくださいました。
「かっぱ」…破裂音が多く、子どもたちが口ずさみたくなる。
「いるか」…大きな声を出して元気よく読む詩。これは声を出して楽しく読むもの。
「おならうた」…好き勝手に大きな音を出して読んでほしいと思う。
「みみをすます」…長編のひらがな詩。ひらがなのおかげで世界が過去、未来、社会などへひらいていく感じ。
「どきん」…子どもがみんな大好きな詩
谷川さんは漢字で表現することを嫌い、あえて「ひらがな」を使って詩を作ったと言います。その背景には、戦争があったそうです。谷川さんの小学生時代は戦時中だったため、恐ろしい漢字があふれていました。戦争協力のための詩もあったと言います。
そもそも詩は漢字で書かれたもので、戦後、「荒地」や「列島」という詩集が刊行されましたが、ここでも漢字の詩が多く、谷川さんは「これは違うのではないか。もっと子どもが楽しめるものでないといけない。」と思ったそうです。
谷川さんは絵本を手がける中で「ひらがな」の重要性に気がついたと言います。「ひらがなは子どもの味方」と言って、ひらがなを使い続けました。また、今まで詩は黙読するものでしたが、「詩は声を出すもの」だと気づきます。今では谷川さんのひらがなの詩は、小学生の教科書に載り、大きな声で読まれています。
正津さんは「大人はひらがなを使わないが、ひらがなを使うと柔らかくなり、気持ちもほぐれる。なるべくひらがなを使いましょう」とおっしゃっていました。
他にも「十二億光年の孤独」を朗読し、谷川さんに六里ヶ原(鬼押し出し)に連れて行かれたエピソードを話してくださったり、「芝生」を取り上げ、「この作品はとても不思議な詩で、周りはよく谷川さんのことを宇宙人だと言うが、この作品を見ると違う世界から来た人のように感じる。自分にはよくわからない詩だけど、わからないことは大切。わからないことはわからないままにしておく。詩はそれが大切。答えを出そうとするのが学校。学校教育はだめ。」と話してくださいました。
晩年、谷川さんは「自分の詩が人を傷つけていたかもしれない。それに気づかないまま死んでいくのかなぁ…」と言っていたそうです。
参加者からの質問では、谷川さんの3度の結婚の裏話や詩が書けなくなった期間のお話しの他、正津さんと本の寺子屋コーディネーターを務めた故・長田洋一さんとのエピソードなど幅広い話が展開されました。
日時
2025年11月16日(日) 14:00~16:00
場所
塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール
講師
正津 勉(しょうづ べん)さん
詩人・エッセイスト。谷川俊太郎関連書に、共作詩集『対詩』、鼎談集『鶴見俊輔、詩を語る』。編著『谷川俊太郎・悼む詩』、『谷川俊太郎・空を読み 雲を歌い 北軽井沢・浅間高原詩篇』他。今秋、『Memorabilia 谷川俊太郎』刊行。


