「信州しおじり本の寺子屋」の間村俊一さんによる講演会「装幀の種」の報告をしています。

間村俊一さん講演会「装幀の種」

本のカバー・表紙のデザインや紙の素材などを決める工程「装幀」。装幀は、本の第一印象を決定する重要な役割を担っています。今回の「本の寺子屋」は、装幀家の間村俊一さんをお迎えし、装幀の魅力や醍醐味についてお話しいただきます。

日時

2016年11月13日(日曜日)13時30分から15時30分

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階・多目的ホール

講師

間村俊一さん

1954年兵庫県生まれ。同志社大学文学部卒業。主な装幀作品に、『新校本宮澤賢治全集』『金子兜太集』(共に筑摩書房)、『新編中原中也全集』(角川書店)、『塚本邦雄全集』(ゆまに書房)など。2016年4月に刊行された『本の寺子屋が地方を創る~塩尻市立図書館の挑戦~』(東洋出版)の装幀を担当した。
全国で展示会を開催するなど装幀家としての活動を精力的にこなすとともに、俳人としても活躍。
俳句は、学生時代洛中の書肆にて『定本加藤郁乎句集』,塚本邦雄著『百句燦燦』に出会い創作を開始。2007年に、第一句集『鶴の鬱』(角川書店),2014年には、第二句集『拔辯天』(角川学芸出版,第八回日本一行詩大賞受賞)を刊行した。他にも、鉛筆画集『ジョバンニ』(洋々社)など。

講演概要

間村俊一さん
間村俊一さん2

間村さんが装幀の仕事を始めてからこれまでの30年間で本づくりの現場はデジタル化が進み、現在ではデータ入稿が主流となっています。そんな中、間村さんは写植や活字といったアナログな手法に魅力を感じ、これまで「版下」と呼ばれる手作りのデザイン原稿を作成してきました。しかし最近、写植会社がついに廃業してしまったためやむなくデジタルに転向されたそうです。

間村さんは、こうした本の業界の現状を踏まえ、紙の本の世界は今後縮小していくだろうと展望する一方、紙の本には、においや触ったときの質感、めくるという行為、重量感といった五感に訴える魅力があるといい、それは今後も大事にしていきたいとしています。

さて、今回の演題「装幀の種」とは、間村さんがデザインをする際に使う「素材」のことです。旅行先で流木を拾ったり骨董市で人形を入手したりと日常的に「種」を収集しており、そのような「種」を使った装幀が思いがけずうまくいったときが一番面白く、そこに醍醐味を感じるそうです。

最後に、本は著者のものだが著者だけのものではなく、編集や装幀、印刷、製本に携わる多くの人の思いと手が込められて成立するものであり、それが本の良さであると語って締めくくられました。私たち図書館としては、そのようにしてたくさんの人の思いがこもって作られた本を一人でも多くの読者とつないでいきたいです。

会場では、間村さんの著書の販売があり、サイン会も開かれました。ご参加くださった皆さまありがとうございました。

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