9月1日(月)降矢ななさん「不安な時代だからこそ絵本を」(報告)

告知内容

『めっきらもっきらどおんどん』や「おれたち、ともだち!」シリーズで知られる絵本作家の降矢ななさんがこんな時期だからこそ絵本の大切さについてお話してくださいます。

講座概要

「絵本は子どもの心に残る、特別な力を持っています」と優しく語られた降矢さん。絵本に込められた想いをお話ししていただきました。

降矢さんの作品は様々な表現方法が駆使されています。最新刊『つるつるプール』ではひやむぎ小学校の生徒たちが細やかな線で丁寧に描きこまれている一方、わらべうた絵本『へっこぷっとたれた』は赤ちゃんに伝わるよう筆ペンで勢いよく描かれています。

どのような絵がより読者の目に留まるのか、子どもの気持ちを一番に考えて描かれているとのことでした。

さて、降矢さんの作品といえばキツネがよく登場しますね。その理由について『まゆとおに』のキツネを取り上げてお話しされました。キツネはまゆの友達で、読者の子ども目線でお話に加わっています。幼い頃キツネのぬいぐるみを大事にしていた降矢さんにとって、お話の世界へ入り込むための切符がキツネでした。キツネは、私たち読者の作中での代理人でもあったのです。

また、降矢さんは現在スロバキアで暮らされています。自然豊かなスロバキアでの暮らしは、そのまま降矢さんの作品にも反映されているようです。『ナミチカのきのこがり』など作品はスロバキアの文化に触れられる作品とのことです。

最後に『飛ぶ教室 55』へ掲載された出来事について話されました。病気で昏睡状態だった子が、その子が大好きで何度も読み聞かせをしていたという『めっきらもっきらどおんどん』を読み聞かせたところ目を覚ました、という俄かには信じがたいものでした。絵本から得た体験は、想像以上に深く子どもの心へ届いています。そしてそれは今の不安定で厳しい時代だからこそ必要なことと話されていました。

降矢さんは「作家として勿論本は売れてほしい。でもそれ以上に、どこかの誰かがかけがえのない1冊に出会えることが大切だと思う」と話されました。本と人を繋ぐ図書館で働く者としても、色々学び・考えるきっかけいただけた講演でした。

御参加いただいたみなさ、降矢さん、ありがとうございました!

日時

2019年9月1日(日曜日)10:00~11:30

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)3階多目的ホール

講師

降矢 なな(ふりや なな)さん

1961年東京生まれ。スロバキア共和国のブラチスラバ美術大学でドゥシャン・カーライ教授に師事。本の挿絵と石版画を学ぶ。主な作品に『めっきらもっきらどおんどん』『ちょろりんのすてきなセーター』「やまんばのむすめ まゆ」シリーズ(以上、福音館書店)、「おれたち、ともだち!」シリーズ(偕成社)、『ナミチカのきのこがり』「わらべうたでひろがるあかちゃん絵本」シリーズ(童心社)、『どうぶつABCえほん』(のら書店)など、多数。現在、スロバキア共和国に在住しながら、絵本やタブローの制作を続けている。

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