5月19日(日)、短歌絶叫コンサートの創出者で、歌人の福島泰樹さんをお招きして講演会を開催しました。この日は今年度第1回目の講演会だったため、開演に先立ち「2024年度信州しおじり本の寺子屋開講式」を行いました。

福島さんは、短歌作りの原点であるお母さまの話や自らの子どもの頃のエピソード、短歌絶叫コンサートを行う意味を丁寧に話してくださいました。

話の終盤では短歌絶叫コンサートを披露され、参加者を圧倒しました。

講演概要

福島さんはご自身の作品のほか、中原中也や寺山修司の作品なども絶叫コンサートで取り上げています。講演では、この短歌絶叫コンサートを始めた背景に、無くなった人への追悼の気持ちが込められていることを話されました。

福島さんは、短歌は想像であり実際に体験していないことでも自分の記憶として思い描き、作ることができるものだと話されました。震災や戦争によって亡くなった人を思い、連想ゲームのように作っていくそうです。そうして出来た自作の短歌を「自分の声で伝えたい」という思いから絶叫コンサートが生まれたといいます。

また、亡くなった人の歌や詩を絶叫する理由として、「その人は死んでいる、でも言葉は生きている。言葉を声に出すことで、その人たちがよみがえって来る。」と、故人を追悼するために声に出している、声で伝えていると話されました。

ご自身も歳をとり、年々家族や友人、知人が亡くなっていく中でも寂しくないと言います。むしろ若い時より今の方が豊かであると感じるそうです。それは、「記憶」があるから。色々な思い出が体の中に去来して、その度に亡くなった人も自分の中で生き返る、だから寂しくないとおっしゃいます。

人間にとって一番大事なものは記憶であること、記憶することがどれだけ大切か、そして大切な人と会話することが大事であることを伝え締めくくられました。


【絶叫コンサート演目】
1.空襲ノ歌(短歌・福島泰樹)
2.特攻兵士の遺言
3.ファイティング原田 (詩・寺山修司)
4.別離(詩・中原中也、短歌・福島泰樹)他

日時

2024年5月19日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

福島 泰樹(ふくしま やすき)さん

 1943年、東京生。早大卒、69年、歌謡の復権を求めて「短歌絶叫コンサート」を創出、朗読ブームの火付け役を果たす。ブルガリアを皮切りに世界の各地で公演。国内外1800ステージをこなす。単行歌集に『下谷風煙録』(皓星社)他35冊、全歌集に『福島泰樹全歌集』(河出書房新社)。評論集に『弔い―死に臨むこころ』(筑摩書房)『寺山修司/死と生の履歴書』(彩流社)、『誰も語らなかった中原中也』(PHP新書)、『追憶の風景』(晶文社)など著作多数。毎月10日、吉祥寺「曼荼羅」での月例「短歌絶叫コンサート」も40年を迎えた。

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