5月26日(日)、クレヨンハウス主宰者で作家の落合恵子さんをお招きして講演会を開催しました。
落合さんの言葉や本への想い、クレヨンハウスを続けている理由、様々な著作や現在の活動について、お話をいただきました。
講演概要
本をめぐるさまざまな視点から考えていきましょう。本をめぐる小旅行、しばらくの間、ご一緒に。まずは言葉です。
言葉を通して私たちは何を理解するか、何を伝えようとしているのか。あるいは突き詰めると、言葉は何が可能なのか。私は、言葉あるいは本の周辺で暮らしてきました。
子どもの時から読者として、読者であることはむろん今でも続いています。そしてある時から、作家、書店、編集者として、人生は本とともにありました。本の潤沢な社会は、言うまでもなく、文化が豊かな社会だと思います。本が栄えることが平和の条件ともいえます。今、ガザ地区の子どもは本を広げることが可能でしょうか。
追い詰められ、攻撃や空爆があって広げることなどできません。願わくば次の世代、その次の世代が、ゆっくりとどんな本でも読むことができる社会になってほしいと思います。が、そう言いながら、心痛みます。ガザ地区の今、子どもを生きている子は、どうするのだ、と。
そして、ここにおられる参加者の皆さま、どうかあらゆる機会に読んだ本のことを語ってください。
本を読む人口が減っている今、本の楽しさを伝えてください。私が子どもの本屋(クレヨンハウス)を48年やってこられたのは、本が大好きだから、そして子どもたちに本を手渡したいと思い続けてきたからです。数多くの本の中で何度でも繰り返し読みたい本が1冊でもあることは、子どもにとって幸せなことだと思うのです。
さらにもう1つの理由は、苦笑しつつ敢えて言うなら、「意地」でしょう。「本屋なんて」と反対されればされるほど、やり続けたくなるのです。今では3世代4世代にわたってクレヨンハウスを訪れてくださる方々がいます。
一方で、悩みもたくさんあります。現在も戦争、人権、不登校で苦しんでいる子どもたちがいます。子どもは今を生きているのです。ガブリエラ・ミストラルの言葉ですが、その子どもに「明日まで待て」といえますか?また、3.11から13年、今でも故郷に帰れない人がいることを忘れてはなりません。社会には「忘れさせていくシステム」が多々あります。私たちはそのシステムにのってはいけない。
目の前にあることや社会で忘れてしまいがちな出来事から目を逸らさずに、もっとやれることがあるのではないでしょうか。
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他にも、復刊させたい本や作家の紹介、憲法について、澤地久枝さんや大江健三郎さんとのエピソードなど、多岐にわたるお話が時間いっぱい語られ、落合さんの魅力あふれる講演会となりました。
講演の最後には、クレヨンハウスのCD絵本『空より高く』(新沢としひこ作詩 中川ひろたか作曲)が会場に流れ、落合さん自らリズムを取りながら歌詞を紹介してくださいました。
「強さとは何かを考えてみてください。私たちの前にある小さなことから始めてみませんか。何かを選ぶとき、今の時代に便利なものでも、何世代か先の子どもたちを想って選ばなくてはいけない。それを大事にしたいと思っています。」と締めくくられました。
日時
2024年5月26日(日) 14:00~16:00
場所
塩尻市北部交流センター(えんてらす) 101、102会議室
講師
落合 恵子(おちあい けいこ)さん
1945年生まれ。「クレヨンハウス」「ミズ・クレヨンハウス」、オーガニックレストラン等を東京と大阪で主宰。総合幼児教育誌『月刊クーヨン』、オーガニックマガジン『いいね』発行人。
著『明るい覚悟 こんな時代に』『母に歌う子守唄 介護、そして見送ったあとに』『老いることはいやでか?』(朝日新聞出版)、『わたしはわたしになっていく』(東京新聞出版)、『おとなの始末』(集英社新書)、『泣きかたをわすれていた』(河出書房新社)、『偶然の家族』(東京新聞出版)、『わたしたち』(河出書房新社)。他に絵本の翻訳なども多数。最新刊の翻訳絵本『ママたちが言った』米国にある人種差別。それらは過去のものになったのか。 その問いはそのまま、日本の過去と現在とも重なります。
NHKラジオ 『落合恵子の絵本の時間』・『夜の栞』 構成と語り 15年目突入。