講演概要

信州の時代劇について三つの切り口から魅力を語る。まず一つ目は『川中島の戦い』。戦国時代の血沸き肉躍る戦いを壮大なスケールで作ることができるのが時代劇における魅力の一つ。そして川中島の戦いは歴史上の中でも大きな合戦で時代劇でも描かれることが多い。まず初めに1969年に放映された時代劇映画「風林火山」。当時の映画スターたちが一堂に会した作品。福島県で撮影され、当時300頭の騎馬を用意し川中島の合戦を再現した。次に1960年代に放送されたNHK大河ドラマ「天と地と」。1960年の前半は大河ドラマが不調で、大河ドラマをやめる話が出ていた。その中で、最後にスケールが大きく派手なもので終わらせたいという会議の後、川中島の合戦をドラマの最終回に持ってきた。その結果ドラマの迫力に魅了され、NHK大河ドラマの人気が戻った。その他にも2007年のNHK大河ドラマ「風林火山」は信州をフィーチャーした作品で、塩尻峠で行われた戦についても1話分(第29話)しっかりと描いてくれている。

二つ目は『真田一族と上田合戦』。武田家が滅びた後も生き延びた真田家。まず忍者としても有名な真田十勇士は昔の子どもたちには人気があり、また、山奥深くにいたこともあり謎な部分も多かったため奇想天外な作品を作られることも多かった。その他には真田家を追いかけた1985年放送のテレビドラマ「真田太平記」。上田城への愛や本来の忍者の姿、信州らしい山深さをありありと描いた作品だ。また最近の作品では2016年の大河ドラマ「真田丸」があげられる。真田家がどの勢力の下につくか、ギリギリの中で生き抜く彼らを見ることができる。

三つ目は『宿場町(街道)』。長野県は中山道が通り貴重な街道がしっかりと形を残している。そんな宿場町が出てくる作品として、1969年に放映された「赤毛」。幕末時代の赤報隊が中山道を進軍していく物語を描いたもの。1973年「木曽街道いそぎ旅」。木曽街道をメインに裏街道(いそぎ旅)を巡る話で、こういった作品はこれしかないのでぜひご覧いただきたい作品の一つ。そして2019年に木曽福島が主になった「帰郷」が放映された。この作品は木曽福島で撮影を行い、木曽の大自然や厳しさ、そして宿場町の魅力も伝わってくるものになっている。

今回は主に三つの魅力から話をしたが、信州を舞台にした時代劇には様々なものがあり、色々な観点から物語を楽しむことができる。それを考えながらこれから作られていく時代劇をぜひ楽しんでいって欲しい。

日時

2020年10月25日(日曜日)14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)多目的ホール

講師

春日太一(かすがたいち)さん
1977年東京生まれ。時代劇・映画史研究家。

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