筑摩書房創業者で塩尻市北小野出身の古田晁氏にちなんだ講演会「古田晁記念館文学サロン」を開催しました。

第1部

2019年太宰治文学賞受賞者の阿佐元明さんが作家を志したきっかけなどについて語りました。

講演概要

作家になるきっかけは、立川市の広報誌で知った公民館の文芸サークルに参加したこと。多様な人と知り合い、お互いの作品を講評しあった。容赦ない批評もあったが、本気で自分の作品に向き合ってもらえる学びの場だった。

講師は作家の河林満氏だった。ある時「お前には才能がある」と言われた。ずっと昔の酒席でもらった一言だが、今でも自分を支えてくれる言葉となっている。才能というのは、自分ではなく誰かに言われて持つものだと思う。

皆さんも身近に才能があると思う人がいたらぜひ本人にそう伝えてほしい。その人にとってやがて実を結ぶ一言になるかもしれない。受賞作の『色彩』はまちの小さな公民館の一室から生まれた。自分のように、地域の文化活動から本が生まれることを願っている。

講師

阿佐元明さん(2019年太宰治賞受賞作家)

阿佐元明さん

第2部

作家で翻訳家の松本侑子さんが、太宰治と古田晁の関係などについて語りました。

講演概要

古田は筑摩書房の創業翌年の昭和16年に太宰と知り合い、太宰の短編小説『千代女』を刊行した。『千代女』はボリュームが少なく、普通は出版されないような小説。太宰にこれからも筑摩で本を書いてもらうために、あえて本にしたのではないか。

太宰には退廃的なイメージがあるが、誠実な知識人という一面もあった。古田は、太宰の知識人としての誠実な態度に共鳴したのではないか。また、良い本を出すためには経費を惜しまず、作家とのつながりを大切にした古田は、時代に迎合する出版人が良識ある作家からどう見られるかを知っていたのではないか。

古田晁は、信州人らしい、文化への信頼に裏打ちされた仕事をした。出版の歴史に名をのこす編集者である。

講師

松本侑子さん

作家・翻訳家/日本ペンクラブ理事。『巨食症の明けない夜明け』(集英社)ですばる文学賞、『恋の蛍  山崎富栄と太宰治』(光文社文庫)で新田次郎文学賞を受賞。英文学と聖書からの引用を多数解明した大人の文学・日本初の全文訳『赤毛のアン』シリーズ(文春文庫)が刊行中。

松本侑子さん

日時

2020年11月8日(日曜日)14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく)多目的ホール

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