10月24日(日)、コロナウイルスの感染により度々延期を余儀なくされていた、朝日新聞編集委員を務める高橋純子さんの講演会を無事に開催しました。 衆議院議員選挙でお忙しい中、国民の関心が高まっている政治について、自分の経験をもとに小気味よくお話してくださいました。

講演概要

1971年に福岡県に生まれた高橋さんは、朝日新聞に入社後鹿児島支局で働き、2000年には政治部に配属されました。総理番と呼ばれる政治部1年生記者が行う仕事をし、その中で首相とメディアの関係を学んでいきます。そして権力に対抗するには新聞社やメディアを叱咤、応援する読者がいることが支えになることを伝えたいと言われました。

 また、編集委員という仕事について一言でいうとロートルの記者のようなものだと話し、自由にテーマを決めて記事を作成したり、専門性を持っていれば本を書いたりすることもできると簡単に説明してくださいました。

 そんな中で、自分はこれといった専門性はないが得意なものを考えたときに『言葉』の使い方について、人が話していることに対して、何か変だなということに気づくこと。それを面白がることは他の人より得意かもしれないと思い当たったそうです。

今の社会は良さそうな言葉で並べられた政策に踊らされがちで、記者である私たちも発言をそのまま記事にしてしまうこともありますが、言葉の本当の意味を理解できないまま使っていくと、本来、はらんでいたであろう矛盾や怪しげな部分が忘れ去られていってしまい、権力者のなすがままになってしまうことにつながり、それは良くないことだと高橋さんは強く言われました。

 また、以前に哲学者の古田徹也さんとインタビューをした際に常套句の危うさについて、心にとまった話をしてくださいました。

戦争が起きるとき、必ず常套句が氾濫している。常套句を使い敵意や憎悪を煽ることで、感受性を麻痺させ、他の可能性への想像力を抑え込み、人々をただひとつへの道へといざなってしまうものなのだ。そんな社会にならないようにするためには、しっくりこないという感覚を手放さないことが大切。自分や他人が発した言葉に対する違和感を大事にすることが必要だそうです。

最後に高橋さんは、自分が違和感のある言葉を使ってしまったときに、使ってしまったことから逃げないようにすること。しっくりこない原因を自分の中で掘り下げていくという作業が自分の感受性を守るということなのだろうと思います。と述べ、言葉というのは本当に恐ろしいものでもあるけれど、言葉によってみなさんとつながることもできます。これからも言葉を大事にしていきたいし、言葉を破壊しても平気な勢力とはきっちり対峙していかなければいけないと思います。と締めくくってくださいました。

講演会後は、講演会に来ていただいた方とコミュニケーションをとることが何より楽しいので、ぜひ質問をしてほしい、とおっしゃり、実際に参加者のみなさんからのたくさんの質問に、ひとつひとつ丁寧にお答えくださいました。

自分たちが普段何気なく使っている言葉ですが、もしこの言葉にしっくりこないとか、相手の言葉に違和感があったときには、言葉の意味をきちんと考えていかなければいけないなと改めて感じました。

高橋さん、参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

日時

2021年10月24日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

高橋 純子(たかはし じゅんこ)さん

1971年福岡県生まれ。93年朝日新聞社入社。

鹿児島総局、西部本社社会部、政治部、オピニオン編集部などを経て、現在は編集委員兼論説委員。およそ月に1回、コラム「多事奏
論」担当。著書に「仕方ない帝国」(河出書房新社)。

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