1/9(日)に絵本作家・いしかわこうじさんの講演会を開催しました。午後の講演会では、ご自身の経験から子育てにおける読書の大切さについて、スライドを見ながらお話ししてくださいました。

講演概要

 子どもの頃は折り紙や工作が好きだった。中学時代は軟式テニスに打ち込んだスポーツ少年だったが、高校から美術部に入部した。
その頃からデザインやイラストレーションに興味を持ち、冨田勲さんのレコードジャケットに憧れて、自分もそういうものを描きたいと思い美大への進学を決めた。

 武蔵野美術大学に入り、友人のアニメ映画監督である今敏さんらと交友を深めるなかでプロの作家になりたいという気持ちが強まった。
イラストレーター時代を経て、ペーパーわんこ作家として活動を始めた。

 ペーパーわんこは10~15センチの小さな紙の犬。ピカソ美術館に紙で作ったオブジェがあり、そこから発想をもらって作った。
学校の授業は遠回りに感じたが、ペーパーわんこの作品を作ったときに学校で習った写真技術が役立ったし、絵本の文字入れやブックデザインもすべて一人でやっていると、学校に行って良かったと思うことは多い。

 ペーパーわんこをテーマに本を作るなか、自分の子どもが生まれ、絵本もやりたいなと思っていた頃、イタリア・ボローニャ絵本原画展に作品が入選した。これもきっかけになり絵本作家として活動を始めた。
絵本は文章がなくても成立する。絵の役割が重要な位置を占めている。ページをめくると二次元から三次元の動きをするため立体的な表現ができると思い、色々な仕掛け絵本を作りはじめた。

 子育ての中で大切にしてきたことは、一緒に遊ぶ時間を多く作ることや、子どもが好きなことや熱中することをサポートしながら伸ばしていくことだった。
自分の親は折り紙の本などをどんどん買ってくれた。道具をそろえ、環境を整えてあげるのは良いことだと思う。

 本好きの子どもを育てるコツは、小さいころから読み聞かせをすることだ。親も子どもの前で楽しく読むことが大事で、楽しく読まないと子どもも楽しくない。
家に絵本や本があると子どもは自然とよく読むようになるが、本をガンガン読まれると買うのが追いつかなくなるので、その時は図書館を利用すると良いと思う。
 本には生きていくための力がいっぱい詰まっている。作者は自分の経験を書いている人が多いので、その成果物を読むだけで相当力がもらえる。本を読むと人の気持ちがよくわかるようになり、知識も身につく。
本が好きな子は勉強もできることが多い。まず問題を読むスピードが速い。本を読むのと水泳は似ていて、小さい頃から泳ぎ慣れている子は全然水を怖がらないしどんどん進むが、泳げない人は全然泳げない。本を読むことも勉強も、それぐらい差が出る。

 自分らしい仕事の選び方としては、自分の幼年期に興味を持ったもの、夢中になったことが鍵になる。最終的には遊んでいる感覚で仕事をすることの方が楽だし楽しいし、世の中に大きな力を与えていくと思う。どの職業でもそうなることは可能なのではないか。どんな仕事でもつまらないと思っちゃうとなんでもつまらない。面白いことを見出せるかどうかだと思う。

 冒頭に「デジタル化が進んだ現代では、本は放っておくと映像などに押しやられる可能性がある。読書は情報伝達だけの手段ではなく、本にはデジタルに無い手触りやにおいがあり、それが記憶に残っていくのではないか。本にはいろんな楽しみ方がある。」と語られ、本に対して強い情熱を持っていらっしゃることが伝わってきました。

 初めて作成した絵本『どうぶついろいろかくれんぼ』をはじめ、『パンダくんのおにぎり』『たまごのえほん』『おめんです2』を講演の途中にいしかわさん自ら読んでくださいました。これまでに出版された絵本たちは明るい色を使うよう意識したそうです。それぞれの作品の制作秘話やこだわったポイントなど、貴重なエピソードを教えていただきました。
 講演後の質疑応答では、絵本や制作に関することや、子育てについての具体的な疑問、いしかわさんの着ていらっしゃるお洋服についてなど、様々な質問が出ました。
楽しい回答で会場を笑わせてくださったいしかわさん。全てのことに情熱をもって取り組んでいる姿勢が印象的でした。

 午前のワークショップ、午後の講演会と、多忙な一日を終えて東京にお帰りになる前に、市内の書店さんも訪問していただきました。
いしかわさん、参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

日時

2022年1月9日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

いしかわこうじさん

1963年千葉県生まれ。

武蔵野美術大学卒業。大学在学中より、イラストレーターとして活動開始。2000年頃から、紙で作った小さな犬「ペーパーわんこ」と世界を旅して撮影するプロジェクトを展開。「世界を旅するペーパーわんこ」等、工作絵本を3冊出版。2006年『どうぶついろいろかくれんぼ』出版を機に絵本作家となる。第9回講談社童画グランプリで大賞。2004年イタリア・ボローニャ国際絵本原画展で入選。第44回造本装幀コンクールで「たまごのえほん」が日本書籍出版協会理事長賞。「おめんです」が第1回積文館グループ絵本大賞を受賞。海外でも翻訳版の出版多数。 『どうぶついろいろかくれんぼ』などの『これなあに?かたぬきえほん』シリーズ(ポプラ社)は累計250万部を超えるロングセラー。『おめんです』『まほうつかい』(以上偕成社)、『たまごのえほん』『はたらくのりものえほん』(以上童心社)、『どうぶついろいろかくれんぼ』『つみきくん』『パンダくんのおにぎり』(以上ポプラ社)、『ならべてあそぼうABC』(小学館)、『世界を旅するペーパーわんこ』(河出書房新社)等がある。

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