2023年10月1日(日)に、東京新聞記者の望月衣塑子さんの講演会を開催しました。

講演概要

先の内閣改造での支持率と、テレビ、新聞などマスコミ報道との関係についての話から講演が始まりました。新聞の発行部数が減りつづけ、ネットニュースやSNSの情報源が優位になるなかで、テレビを見る人も減っている。マスメディアへの期待が低下し、新聞やテレビが世論を形成する力を失っていることを、新聞記者として憂いていると。

現在、日本は軍拡に向かっていると望月さんは警告します。

日米韓三カ国首脳会談では、麻生副総裁が「戦う覚悟です」と発言。しかし、これは麻生副総裁の個人的な発言ではなく、外務省が準備した台本であると取材の結果わかったと仰いました。その後、日本は、世界で最も新型高速滑空弾の技術が進んでいる中国に対抗するため、アメリカとの新型迎撃ミサイル共同開発を決めました。

また、防衛産業強化支援法が参議院で可決されたことにも触れられました。この支援法では防衛産業を支援し、赤字倒産するような企業であったとしても、国が買い取り、保有・支援することになります。過去に赤字企業を法律で担保して保護したことはないそうです。

復興特別所得税や国立病院機構積立金が軍拡に充てられ、関連企業などが「飴に群がるアリのようだ」と揶揄されるほど、資金が集められていく。その一方で、保育士や看護師の給料は上がらず、東京芸大ではエアコンを止め学費を上げ、それでも足りず資金補填のためにピアノも売らざるを得ない。福祉も学問も切り捨て、軍拡に。これでは太平洋戦争のころのようだと続けられました。

それだけでなく、これら軍拡・増税・武器輸出論調に加担するメディアトップの存在にも言及しました。

記者としての私のテーマは「戦争したい人に、戦争をさせないこと!」、メディアの役割は「権力の監視、チェック」だと望月さんは言い切ります。

一つ一つは小さいけれど、数は力になります。「連帯し、声をあげよう!市民の声を官邸や記者たちへ!」と訴えておられました。

最後に幣原喜重郎の「非武装宣言ということは、従来の観念からすれば狂気の沙汰である。だが今では正気の沙汰とは何かということである。武装宣言が正気の沙汰か。それこそ狂気の沙汰だという結論は、考えに考え抜いた結果もう出ている。」という憲法第9条への言葉、ガンジーの「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。それをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。」という言葉で講演会を締めくくりました。

その後行われた質疑応答では、丁寧に、そしてメディアの否を認めるべきは認めるなど真摯に答えてくださった望月さんの姿も印象的でした。

「こんなに質問がでたり、ご自分の考えを述べられたり、塩尻は熱い!」とサイン会の最後に仰っていました。 望月さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。

日時

2023年10月1日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師紹介

望月衣塑子さん

1975年、東京都生まれ。2000年に東京・中日新聞に入社。2004年に日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし、自民党と医療業界の利権構造を暴く。その後、防衛省の武器輸出、軍学共同、森友学園・加計学園問題の取材を続け、現在は社会部遊軍記者として、入管問題、ジェンダー格差、ロシアのウクライナ侵攻などを取材。著書に『武器輸出と日本企業』(KADOKAWA)、『武器輸出大国ニッポンでいいのか』(共著、あけび書房)、『THE 独裁者』(KKベストセラーズ)、『権力と新聞の大問題』(集英社)、『なぜ、日本のジャーナリズムは崩壊したのか』(講談社)、『報道現場』(KADOKAWA)など。2017年に平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞を、2019年には「税を追う」取材チームでJCJ大賞を受賞した。

講演写真

ポスター

04bd1cf7e8fe4d4bd85cea92fb9ed80d