11月19日(日)、能楽師(ワキ方下掛宝生流)の安田登さん、俳優の佐藤蕗子さん、琵琶奏者のかすみさんをお招きして、地域文化サロン「能楽と語りで聴く古典『耳なし芳一』」を開催しました。
普段の本の寺子屋とは異なる雰囲気の中、安田さんの謡とかすみさんの奏でる琵琶にあわせて、佐藤さんが語る「耳なし芳一」を堪能しました。
講演要旨
今回は講演会ということで、上演を挟みながらいろんなお話をしてくださいました。
前半は「耳なし芳一」の語りと、それにまつわる平家物語の話を余談も交えてお話してくださいました。
「耳なし芳一」の話はベースになるのが平家物語のため、理解を深めるために「祇園精舎」と「壇ノ浦の合戦」を全員で朗読をしました。朗読後には安田さんがそれぞれに解説をしてくださり、「平家の怨霊を鎮める為に造ったお寺に盲目の少年がいました。ここからこの物語が始まります。というわけで、耳なし芳一お聞き下さい。」と上演が始まりました。
『耳なし芳一』 謡/安田登さん 語り/佐藤蕗子さん 琵琶/かすみさん
その後、琵琶によって100年前の幽霊が現れてしまった、というお話「青山の沙汰」について紹介があり、全員で朗読をしました。
琵琶という楽器は元々が霊を招く楽器だそうです。琵琶はただの音ではなく、「ビィ~~~~ン」となるのが特徴で、初めの音より後の音「ィ~~~~ン」のほうが重要で、ノイズ(雑音)を入れるのが実は霊を招く音だそうです。
しかし、下手になると霊が来ないので、霊を招く楽器ではなくなってしまいます。上手い人ではないと霊は来ないそうです。
そんな解説をされた後、改めてかすみさんによる琵琶の演奏を聴きました。とても臨場感のある音で迫力がありました。
休憩を挟み、後半は木曽義仲のお話をしてくださいました。
『木曽義仲/太田の清水』 謡/安田登さん 語り/佐藤蕗子さん 琵琶/かすみさん
解説では、太田の清水や洗馬の地名の由来が木曾義仲からきたという話しをしてくださいました。そして、
「義仲公の話は平家物語にたくさんあるのですが、今日は倶利伽羅峠のところを読んでみたいと思います。義仲公の戦略がすごくよく出ているところですね。」
そう紹介された「倶利伽羅落」を全員で朗読し、最後にその一説を演じていただきました。
日本の伝統芸能でありながら能楽は馴染みの薄いものでした。今回の講演はとても楽しく、目前で聴けたことは貴重な経験になりました。
安田登さん、佐藤蕗子さん、かすみさん、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
日時
2023年11月19日(日)14:00~16:00
場所
塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 3階多目的ホール
講師
安田 登(やすだ のぼる)さん
能楽師(ワキ方下掛宝生流)。
東京を中心に能の公演に出演。また、神話『イナンナの冥界下り』での欧州公演や金沢21世紀美術館での『天守物語(泉鏡花)』など能・音楽・朗読を融合させた舞台を数多く創作、出演する。Eテレ100分de名著『平家物語』『太平記』講師・朗読。著書多数。
関西大学特任教授。
佐藤 蕗子(さとう ふきこ)さん
俳優。東京生まれ。2021年から塩尻在住。
主に舞台を中心に活動。近年では能楽師の安田登氏主催の公演に参加し、足立区のプラネタリウムや金沢21世紀美術館など各地で公演している。
また、小学校~大学でのワークショップや巡回公演、演劇の授業で講師を務めるなど、教育分野への関心も高い。0歳児子育て中。