2023年10月22日(日)、塩尻市北部交流センター(えんてらす)にて、黒姫童話館ミヒャエル・エンデ資料監修者、ドイツ文学者の堀内美江さんの講演会を開催しました。

講演概要

 はじめに、会場にミヒャエル・エンデさん(以下敬称略)の愛用していたパイプとカメの置物、写真が展示され、サイン付きの『モモ』を紹介いただきました。

 講演では、堀内さんがエンデさんとお会いした経緯、黒姫童話館になぜエンデ作品があるのか、ルーツとなる両親、作品『モモ』、エンデが考える文学の使命は何だったのかを掘り下げてお話いただきました。

 堀内さんが初めてエンデに会ったのは、1980年終わり、大学の文化交流でミュンヘンに留学したとき。恩師のドイツ文学者、子安美知子先生の紹介でした。そしてエンデの凄さを知ったのは、黒姫童話館でエンデが生前から自ら選んだ2000点以上の資料を整理している時でした。

 エンデがどんな考えを持ち、日本に送り続けた情熱、資料から見えてきたことを、語り継いでいきたいと堀内さんは言います。

 1973年に『モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語―あるメルヘン小説』を出版。挿絵はエンデ自身が書き、読み手の想像力の自由をできるだけ奪わないように、モモの顔を書かず後ろ向きに描いています。

 『モモ』は教えてくれます。時間は数字では割り切れないもので、自分の時間は自分でしか味わえないもの。時間は自己決定できるものであると。

 コロナ禍の3年間は、動きたいのに規制があり、本当は変わりたい気持ちにブレーキをかけました。一番影響を受けたのは、子どもたちではなかったでしょうか。幼児教育をしている堀内さんは、子どもたちがいい子に育っているが、失敗を恐れていると感じるそうです。でも、動いて失敗しなければわからないことがあります。エンデは、直観みたいなものを大事にしていました。直感で動くことこそが、人間にとって一番自由かもしれない、失敗も自由だと。

 現代社会の不自由さ閉塞感が『モモ』に手が伸びるきっかけになりました。自分というものが凝り固まってしまったときに、ちょっとした勇気を与えてくれる『モモ』から、自身の内面に向き合う姿勢を考える。そして、「信頼と愛情と希望」。原因と結果ではなく、徳ということ。この徳はどんな経験をしたのかが、経験を通して古来からの知恵につながるものではないか。

 エンデは創作意欲についての原動力を、「遊びたい子ども」と例えています。ファンタジーという力の可能性の体現でした。そしてその力は「未知の冒険」へと向かい、知らなかった体験やアイデアが生まれてくる、自由で、意図がない遊びの愉しみだと『エンデのメモ箱』で述べています。

 堀内さんのユーモアを交え、エンデの人柄や作品をたっぷりお話くださり、参加者の質問にも答えてくださいました。

 エンデ作品をもう一度読み直してみたいと感じた、充実した講演会となりました。堀内美江さん、参加者のみなさんありがとうございました。

【講演中の書籍紹介】
『モモ』、『鏡のなかの鏡』、『はてしない物語』、『闇の考古学』、『ジム・ボタンの冒険シリーズ』、『エンデのメモ箱』、『エンデと語る』

日時

2023年10月22日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市北部交流センター(えんてらす) 1階 101・102会議室

講師紹介

堀内美江さん

愛知県豊橋市生まれ。シュタイナー教育を日本に紹介し、また黒姫童話館のエンデコーナー創設にも尽力した、故子安美知子早稲田大学名誉教授に師事。大学院在学中にドイツ・ミュンヘン大学へ留学した際、この恩師に連れられてエンデ氏と出会う。エンデ氏の根本的な考え方や愛嬌あふれる人間性に触れ、今はその記憶が、自分自身の大きな糧となっている。帰国後は、日本の黒姫童話館にエンデ氏自身が選んで送り続けた、2千点以上の私的資料整理を引き継ぎ、完成させた。その記録は『エンデの贈り物』(河出書房新社)として刊行されている。現在は教育分野の本業に精進しながら、エンデ氏の作品と思想を伝えることと、子安美知子氏が残したエンデ氏の資料を整理公開することを、ライフワークとして掲げ、小さな活動を重ねている。黒姫童話館では、毎年秋に、童話館のエンデ資料を用いながら、小さな読書会も開催している。

講演写真

ポスター

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