11月13日(日)、数多くの絵本や紙芝居を手がけている絵本作家、長野ヒデ子さんの講演会を開催しました。長野さんはご自身の生い立ちやデビュー作『とうさんかあさん』ができた背景、今までの作品に秘められたエピソードなどを語ってくださいました。

講演概要

 デビュー作となった『とうさんかあさん』は、福岡にあった葦書房という出版社から出版されています。当時、長野さんの自宅の近所にあった書店に手作りの作品を置いていて、それをたまたま見た編集者の福元満治さんが「この本を出版したい!」と長野さんに話を持ち掛けたことが始まりだったそうです。『とうさんかあさん』は、葦書房の倒産後は福元さんが作った石風社で出版されています。長野さんはこの福元さんとの出会いをとても貴重なことだったと感謝していらっしゃいました。
 「作家、絵描きがいるだけでは絵本は出せない。素晴らしい編集者がいないといけない。素晴らしい編集者とは「ああしなさい、こうしなさい」とは言わない。その人(作家など)のもっているいいところを見抜いて、理解して、自分で気づくように空気を作ってくれる。」そうおっしゃっていました。また、「素晴らしい編集者がいる出版社は、たとえ小さくても応援しないと出版文化を守っていくことはできない」ともおっしゃっていました。
 長野さんは『とうさんかあさん』でデビューした後、『おかあさんがおかあさんになった日』を作ります。この作品は、赤ちゃんが生まれる、お母さんが赤ちゃんを産むことを題材にした本は沢山あるにもかかわらず、「お母さんが生まれる」という視点はほとんどないという気付きから創作意欲につながったといいます。
 長野さんは絵本以外に紙芝居も創っていらっしゃいます。絵本で出版した作品を紙芝居にするには、ただ形を変えるだけではダメで、それぞれの媒体にあったものに加筆修正する必要があるといいます。そこに紙芝居の魅力を感じて「作ってみたい!」と思ったそうです。長野さんの作品はわらべ歌を取り入れた作品が多いですが、そこには「ご自身のお母さんから受け継いだわらべ歌を伝えたい」という思いが込められています。紙芝居を通じて生身の言葉で子どもたちに伝えてほしいとおっしゃっていました。
 ほかにも「せとうちたいこさん」シリーズや「とのさま」シリーズで描かれているものは、長野さんの日常でおこっている出来事を、少し見方を変えて作品にしているという話をしてくださいました。

日時

2022年11月13日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

長野 ヒデ子(ながのひでこ)さん

1941年、愛媛県生まれ。絵本作家。絵本や紙芝居、イラストレーションなどの創作の仕事のほかエッセイや翻訳も。代表的な作品に『とうさんかあさん』(石風社/絵本日本賞文部大臣賞受賞)、『おかあさんがおかあさんになった日』(童心社/サンケイ児童出版文化賞受賞)、『せとうちたいこさん・デパートいきタイ』(童心社/日本絵本賞受賞)、紙芝居に『ねこのたいそう』(童心社)など。2021年9月に『かこさとし手作り紙芝居と私 原点はセツルメント時代』を出版。

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