7月17日(日)、共同通信社編集委員で映画評論家の立花珠樹さんの講演会が開催されました。
講演概要
立花さんの少年期は映画黄金時代であり、高倉健と同郷という偶然が映画の世界にすすむきっかけだったそうです。
俳優:高倉健
当初、つっこみ役者(二枚目だけどちょっと弱い)という評価だったが、「やくざ映画」に出演することで大きく変わっていき、日本が高度経済成長に突入し近代化がどんどんすすんでいく中、その時代の波に乗れなかった人々の代弁者として、その思いを背負ってヒーローになっていった。その「やくざ映画」が下火になり演じる役を失ったが、『幸福の黄色いハンカチ』で山田洋二監督と出会うことで復活したとおっしゃっていました。『私の十本』に登場する直前に亡くなってしまったと話されたときはとても残念そうでした。
俳優:吉永小百合
1945年3月13日、東京大空襲の3日後に生まれ、戦後の「希望」や「青春」を背負った女優と言える。1980年公開『動乱』で高倉健と出会い、そこでひとつの役に向き合う姿勢を学んだことや、1972年公開『男はつらいよ 柴又慕情』で渥美清と親しく語り合うことが声が出なくなるアクシデントを乗り越えるきっかけになった。それらの出会いが今も俳優を続けられている理由ですとインタビューで話されていたそうです。
俳優:渥美清
1992年12月公開『男はつらいよ 寅次郎の青春』撮影中のインタビューでは、年を取って最近感じる言葉として「時は人を待たず」だとおっしゃっていました。インタビュー音声では「映画のいいところは見も知らない世界に連れて行ってくれること。小さな国で撮った映画を観るとほくほくするね」といつもの寅さん口調を聴くことができました。
名優たちのエピソードや立花さんご自身の体験を通じて「いい出会いをすることは大切だ」とおしゃっておられ、確かにそうだと強く感じさせられました。
映画は何かを伝えたいとき、記録・記憶するときに重要であり、これからも映画について書き続けていきますと力強くおしゃっていました。
最後に淀川長治の言葉として「映画の中には今がある」、ぜひ映画館に足を運んで日常的に味わって欲しいとおっしゃっていました。
高倉健や渥美清の懐かしい肉声がスピーカーから流れるたびに、参加された方々も頷いて聴き入る姿が印象的な講演会でした。
立花さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
日時
2022年7月17日(月) 14:00~16:00
場所
塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール
講師
立花珠樹(たちばな たまき)さん
1949年北九州市生まれ。一橋大卒。74年共同通信社入社。ニューヨーク支局、文化部などで映画取材を担当する。文化部長、編集委員室長を経て、2010年から映画専門の編集委員。三國連太郎、香川京子、若尾文子、岩下志麻、吉永小百合、新藤兼人、篠田正浩、山田洋次ら、日本映画を支えてきた映画人のロングインタビューや、名画の楽しい見方を紹介するコラムなどを執筆。現在、信濃毎日新聞など各地の新聞に日本映画の連載コラムや評論、記事が掲載されている。
著書に
『 もう一度見たくなる100本の映画たち 』(言視舎)、 『 厳選 あのころの日本映画101 』(同)、 『 私が愛した映画たち 』 (吉永小百合と共著、集英社新書)、 『 若尾文子 “宿命の女 なればこそ 』(ワイズ出版)、 『 凛たる人生 映画女優香川京子 』(同)、 『 岩下志麻という人生 』 (共同通信社)など。