8月4日(木)、青山学院大学教育人間科学部の准教授である庭井史絵さんの講演会を開催しました。GIGAスクールが始まり学校をとりまく環境が変わってきた今、学校図書館が担う役割が何なのか、お話を聞く事ができました。

 今回は、学校職員向け講演会ということもあり、教員や学校司書の方が多く参加されていました。図書館に子どもたちを戻ってこさせることはできない、という話がとても印象的でした。教育の形が変化する中で、図書館もアップデートする必要性を感じた講演会でした。

講演概要

 GIGAスクールとは、いつでもどこでも誰とでも学ぶことができる環境を作る目的で始まりました。この「いつでもどこでも誰とでも」を実現するために、一人1台のタブレットとネットにアクセスできる環境の整備が進んでいますが、現在ハード面の整備はほぼ終了し、ソフト面をどうするかの検討が必要だということです。

 今までの教育スタイルは、子どもたちを1つの学校や教室に集めて教えるスタイルだったため、学校や教室に来さえすれば先生が用意した資料を使って効率よく学ぶことができていました。しかしGIGAスクール下では、「教材はありとあらゆるところにあり、時間や場所を選ばずに自由に学べる」、これがこれからの学びの姿だといい、一人ひとりにあった教育が求められます。

 GIGAスクールが始まり、図書館や司書からは授業で図書館が使われなくなった、どうすれば子どもたちが戻ってくるのか知りたい、という声が多くあがりますが、これに対して庭井さんは「これからの学校教育が教室の外に出ようとしている。学びの場を限定せずに家庭や社会、地域などに出て行こうとしている。それをあえて「図書館」という枠の中に戻すということは違うし、戻ってはこないだろう」と私達に新たな気付きを与えてくださいました。これからは「図書館を使う」ではなく「図書館の機能を使ってもらう」ために、司書が学校図書館を再定義し、教員へ働きかけることが求められるだろうと言います。

 これからの子どもたちに必要な力は情報活用能力と言語能力で、適切な情報を見分ける力を身に着けさせるのも司書の役割だといいます。学外にあるネット情報を授業とつないであげられるように準備をしたり、ありとあらゆる場所で情報収集、活用できるように下調べをしたり、司書ができることをアピールする重要性も感じました。

 また、主体的で対話的な学びを深めるために、本を読んで終わりではなく読んだものを人と共有し相互交流が生まれる取り組みの事例を交えながらGIGAスクールの中で必要な、対話的読書の必要性も紹介して下さいました。


日時

2022年8月4日(木) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

庭井 史絵(にわい ふみえ)さん

青山学院大学教育人間科学部准教授、放送大学客員准教授

西宮市立小学校司書、甲南高等学校・中学校司書を経て、2001年から慶應義塾普通部専任司書教諭、2019年から現職。司書、司書教諭、学校司書の養成に携わる。
学校図書館における読書教育、情報リテラシー教育、探究的な学びについて研究。著書に『学校図書館への研究アプローチ』(共著、勉誠出版、2017)『学校図書館メディアの構成』(共著、樹村房、2016)『ICT活用の理論と実践 : DX時代の教師をめざして』(共著、北大路書房、2021)など。長野県御代田町在住。

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