10月23日(日)、「小説新潮」編集長、「新潮新書」編集委員を務め、京都造形芸術大学文芸表現学科教授もされた校條剛さんの講演会を開催しました。校條剛さんは、題にある三人についてと他の作家についても自分の思い出と合わせながら、作家としての彼らについてお話ししてくださいました。

講演概要

 校條さんは三人の話をする前に自身のことについてお話し、「小説新潮」の編集長を辞めた後、自分自身の価値について考えたそうです。編集長という肩書が無い中で、自分に何ができるのか。考えたときに大衆文学の記録を残したいという思いで『ザ・流行作家』、『作家という病』という作品を書きあげ、その後、10年かけて初めての小説『小説殺法の殺人』を仕上げたそうです。
 作家については、初めに『復讐するは我にあり』で直木賞を受賞した佐木隆三さんのことをお話ししてくださいました。彼は仲間内で同人雑誌を作っており、そこからプロの道に進んだ方だそうです。仲間がいた中で、なぜ彼だけがプロになれたのか。そこには作家になるという執念を持って作品に取り組んでいた佐木隆三さんの熱心さがあったからではないかと語りました。犯罪系の小説やお話しを多く書き、事実を書くために怖い取材にも行っていたそうです。作家自身も戦場にたどり着かなければ、本当の事実を書きあげるのは難しいと校條さんは仰っていました。
 次に津本陽さんについて。歴史小説を多く書いた津本陽さんは、校條さんの目から見て仕事をしすぎだったように感じたと校條さんは語りました。色々な形で自分を変えようとしていたが、それが悪い方に変わってしまったとも仰っていました。
 さらに、藤田宜永さんのことは明るいビジネスマンのような作家だったと言い、彼は作家という仕事を義務のようなものと捉えて書いていた、商才に長けた人だったと話しました。
 校條さんは、作家の話をする中で、今の作家は作家で生きていくのが難しいことや今後の作家には自分をマネジメントする能力が必要になってくるともお話しされました。
 また、「小説を書くことは麻薬のようなものだ」とも述べ、小説を書くことに対する自分の思いを語ってくださいました。

日時

2022年10月23日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

校條 剛(めんじょう つよし)さん

1950年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業と同時に、(株)新潮社に入社。月刊雑誌「小説新潮」編集部に30年近く在籍。9年間は編集長。新潮新書編集委員として、ミリオンセラー『国家の品格』を手掛ける。新潮社退職後、日大芸術学部文芸学科講師、朝日カルチャーセンター小説講座講師、電子文芸誌「アレ!」編集長。2014年から京都造形芸大(現・京都芸術大)文芸表現学科教授として京都に赴任。2019から「京都文学賞」選考委員。『ぬけられますか 私漫画家滝田ゆう(07年、大衆文学研究賞受賞)、『ザ・流行作家』『作家という病』、『にわか〈京都人〉宣言』など

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