4月24日(日)、現代詩作家で2016年度の「信州しおじり本の寺子屋」にお越しいただいた荒川洋治さんの講演会を開催しました。
講演会の前に行われた開講式は、赤羽教育長の挨拶で始まりました。コロナ禍の中でも学びを求め、生涯の読書活動を大切にしていく本の寺子屋の重要さとそこに参加してくださる参加者の皆様や講師の方々、長田さんに感謝を述べました。
荒川さんは美しい短編小説の数々などを語ってくださいました。

講演概要

初めに、荒川さんはロシアとウクライナの地図を見ながら、ロシアには美しい短編小説を描いた文学者たちが多く存在しているが、昨今のロシアにより、美しい短編が崩れていくのを見ると、私たちの作り上げてきたものも突如崩れてしまう世界なのだと感じます。と、話されました。

短編小説の魅力は、短編小説はいくつもの崖があり、その崖を飛び越えながら物語を読み進めていくことだと話されました。

例えばシュトルムの「みずうみ」という短編は人の心が動かされる話とのこと。
この小説の中には分岐点と開放点が存在し、分岐点を乗り越えることで、いつか自分たちが本当に物語を理解でき、そのときに小説を自分のものとして受け入れることができる。と仰っていました。

また荒川さんは、数多くの日本の文豪たちの様々な短編小説を紹介してくださいました。
おすすめの短編小説の作家は阿部昭と三浦哲郎。ぜひこの二人の短編は読んで欲しいと強く語られました。

最後に、素晴らしい短編小説には独特の世界があり、読んだ後になぜか懐かしさを感じる。これは人間が感じるおおもとの線をしっかり描きだすことができているから。
この短い小説の中に私たちが繋がる世界があり、世界を作り出しているのです。
と締めくくりました。

日時

2022年4月24日(日) 14:00~16:00

場所

塩尻市市民交流センター(えんぱーく) 多目的ホール

講師

荒川 洋治(あらかわ ようじ)さん

現代詩作家。1949年、福井県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。 1975年の詩集『水駅』でH氏賞を受賞、1980年から著作に専念。詩集『渡世』で高見順賞、『空中の茱萸』で読売文学賞、『心理』で萩原朔太郎賞、『北山十八間戸』で鮎川信夫賞を受賞。評論集『文芸時評という感想』で小林秀雄賞、『過去をもつ人』で毎日出版文化賞書評賞を受賞。他にエッセイ集『霧中の読書』『文学は実学である』、岩波現代文庫『詩とことば』など。2019年、日本芸術院賞・恩賜賞を受賞。日本芸術院会員。

講演会写真1
講演会写真2
847bc578d9501ab3d063a6874cd78ec4